草木染め(植物染め)を始めてみよう【基本のはなし】
こんにちは。布が大好きで、時々草木染めの講師もやっているnunocotoスタッフです。
草木染め(植物染め)をやってみたいけれど、どうやってやるのかわからない、という方も多いのではないでしょうか。
何の植物を使って染めるかにもよりますが、草木染め(植物染め)は身近な材料や道具を使えば、キッチンで簡単にできちゃうんです。
今回は、草木染め(植物染め)の基本の話や用語の説明をしていきますね。
草木染め(植物染め)とは
ちょっと科学のおはなし。
『原子』にはそれぞれ手があって、その手が結びあって『分子』になる、ということを学生のころに教わったと思います。草木染め(植物染め)もその原理で布や糸に色を染めます。
植物の葉っぱや枝、根っこはいろいろな物質でできています。
その物質には色素分子(色を持った分子)が含まれていて、植物を煮ることで、水に溶けやすい色素分子が出てきてます。(煮なくても色素が抽出できる植物や、発酵することで濃くなる植物などもあります。)
その色素分子が溶けだした液を抽出液(染色液)といい、抽出液(染色液)に布や糸を浸すことで色素分子が布や糸繊維(分子)と化学反応を起こして結びつき、布や糸に色が付きます。
植物にはいろいろな種類の色素を含んでおり、使う布や糸の繊維の種類や媒染剤などによって色が変わります。
染色の工程の基本
-
染料になる植物によって多少の違いはありますが、基本の染色の手順は以下の通りです。
-
1.染める布や糸の下地処理をする。
-
2.染料から色素を抽出する。
-
3.布や糸を抽出した染色液で染める。
-
4.水洗いする。
-
5.媒染する。(媒染液はあらかじめ作っておく)
-
6.水洗いする。
-
7.3~6を繰り返す。
-
8.干す。
草木染め(植物染め)に使う植物染料について
上で述べたように、植物には色素が含まれています。
植物によって、色素が水に溶けだしやすいものや色が定着しやすいもの、繊維に染まる濃さなどは様々ですが、ほとんどの植物で草木染め(植物染め)をすることができます。
メジャーな染料
藍染めや茜染めなど、草木染めといったらまず思い浮かぶ植物染料があります。これらのメジャーな植物染料は濃い色に染められるのが特徴で、染料として販売されているものも多いです。
ex)藍、茜、紅花、蘇芳、矢車、ログウッド、キハダ、クチナシなど。
身近な植物
散歩していると手に入ったり、庭に植えてある身近な植物も染料になります。桜の落ち葉や栗のイガ、外来種でもあるセイタカアワダチソウは濃い色に染めることができます。
ex)桜の枝・落ち葉、栗のイガ、セイタカアワダチソウ、ヨモギ、フキ、マリーゴールドなど。
食材から出る染料
草木染め初心者に一番おすすめしたいのが、食材から出る染料です。玉ねぎの皮やアボガドの皮など、食材の廃棄してしまう部分で濃く染めることができるんです。
ex)玉ねぎの皮、アボガドの皮、栗の鬼皮、ニンジンの皮、紅茶やコーヒーの出がらしなど。
草木染め(植物染め)に使う布や糸について
草木染め(植物染め)に使う布は、基本的には天然繊維となります。
具体的には、植物繊維である「コットン(綿)」や「リネン(亜麻)」、動物繊維である「シルク(絹)」や「ウール(毛)」です。また、化学繊維でも、木材を再生して作った「テンセル」や「レーヨン」などの再生繊維は使うことができます。
nunocoto fabricの白い布(オックス・ローン・ダブルガーゼ・コットンツイル・コットンリネンビエラ・キャンバス)は天然繊維の布のため、草木染め(植物染め)に適しています。
布や糸の下処理について
精錬(せいれん)
市販の布には糊やホコリがついていたりするので、そのまま染めるときれいに染まりません。なので、ぬるま湯に15分ほど浸して優しく洗います。糊がついている布の場合は中性洗剤(おしゃれ着洗い用の洗剤)や専用のソーピング剤を入れたぬるま湯に浸してから優しく洗い、脱水→しっかりとすすぎ→脱水します。
nunocoto fabricの白い布(オックス・ローン・ダブルガーゼ・コットンツイル・コットンリネンビエラ・キャンバス)はまっさらな生地のため、通常の水通し程度でOKです。
下地処理(濃染処理)
染める布や糸の繊維の種類によって、下地処理の方法が違います。動物繊維(シルク・ウール)の場合
タンパク質で成り立っており、タンパク質は色素分子と結合しやすいため、染まりやすく色落ちしにくいため、精錬をすればOKです。
植物繊維(シルク・ウール・テンセル・レーヨン)の場合
セルロースで成り立っており、動物繊維よりは色素分子と結合しにくく、染まりにくく色落ちしやすいです。そのため、 植物繊維の布や糸を染める場合は、豆汁(ごじる)や投入に浸してたんぱく質をしみ込ませてあげるか、陽イオン系界面活性剤(専用の濃染剤や柔軟剤)に浸して色素分子と結合しやすく濃染処理します。
植物繊維の布や糸を使って染める場合でも、濃染処理が不要な天然染料もいくつかあります。
地入れ
染める布や糸を40~50℃のお湯に浸し、繊維に水分をしっかりとしみ込ませます。
ここでまんべんなく水分をしみ込ませることで、染めた時の色ムラができにくくなります。
色素の抽出について
植物から色素を抽出する一般的な方法は、植物を煮て水に溶かし出す方法です。
その方法は大きく分けて3つあります。phの値が関係するため、ph試験紙を使うことが多いです。どのph値だと抽出しやすいかは植物によって違います。
水抽出
植物を水で煮て色素を抽出します。水で抽出できるので、ph試験紙は必要ありません。
アルカリ抽出
水に重曹などのアルカリ性の物質を入れて煮て色素を抽出します。
酸性抽出
水に酢やクエン酸などの酸性の物質を入れて煮て色素を抽出します。
媒染について
基本的に、染色液で染めた布や糸は、媒染剤を用いて繊維に色を定着させます。
媒染剤には水に溶けている金属(金属イオン)を使うことが多く、金属イオンの力で布や糸の繊維と色素を強く結びつけることで色落ちしにくくなります。
同じ植物で染めた布や糸でも、媒染剤の種類によって違う色になります。これは、金属イオンが色素と結合するときに電子の位置が変わり、私たちの目に見える色が変わるのですが、金属によってその変化が違うためです。
媒染の種類とやり方
無媒染
多くの植物染料は媒染をしないと色落ちしてしまうのですが、媒染不要の植物染料もあります。藍、キハダ、紅花は媒染不要です。
後媒染
一般的には、布や糸を染色液で染めてから媒染剤を溶かした水(媒染液)に浸して媒染します。後媒染の方が染色液が布の内部に入りこみやすく色落ちしにくいです。
先媒染
布や糸を媒染してから染色液に入れて染色します。この方法だと、早く染色できますが色落ちしやすいです。ただし、染料や布の種類によっては先媒染の方が向いているものもあります。
媒染剤の種類
アルミ媒染
主な媒染剤にミョウバンがあります。生ミョウバンと焼きミョウバンがあり、焼きミョウバンはスーパー手に入ります。
アルミ媒染をすると色は大きく変化せず、色素本来の色を強くすることが多いです。
鉄媒染
錆びた鉄くぎを酢に入れて作ったものや、市販の木酢酸鉄があります。鉄媒染をすると暗めの色に変化します。
銅媒染
市販の銅媒染剤を使うことが多いです。銅媒染をすると、少し茶が強くなることが多いです。アルカリ媒染
灰汁や消石灰の上澄み液を使います。赤い色に作用します。色素抽出との兼ね合いもあります。
酸媒染
食酢やクエン酸などを使います。アントシアニン色素に作用します。色素抽出との兼ね合いもあります。アルミナ媒染
椿の灰はアルカリ+アルミを含んでおり、両方の性質を持っています。椿の灰の上澄み液を使います。草木染め(植物染め)にチャレンジしてみよう
今回の記事では、基本的な草木染め(植物染め)の仕組みや工程、用語について説明しました。
実際には、染料として使う植物によって色素を抽出しやすい部位や抽出方法に違いがあります。また、媒染剤の種類だけではなく、濃度でも色の出方が違います。植物染料や繊維の違いや組み合わせによって必要な助剤もそれぞれです。
その奥の深さが草木染め(植物染め)の楽しさではありますが、キッチンで手軽にできるのも草木染め(植物染め)の良さです。
まずは、身近な材料だけで簡単にできる玉ねぎ染めからチャレンジしてみるのはいかがでしょう♪