【ハンドメイド暮らし】クリエイターのお仕事ファイル~gauche(鈴木千晶さん)~
ハンドメイドをはじめた人なら一度は夢見る、ハンドメイド作家デビュー。
今では、ハンドメイド作家さん専用の販売サイトも増え、ひと昔前よりも手の届きやすい存在になりました。
そこで、nunocoto fabricでは、実際にヒット作やユニークな作品を生み出し、活躍されているハンドメイド作家さんにお話を伺い、リアルな暮らしを皆さんにお届けすることにしました。
nunocoto fabricで取り扱う布や、型紙を使って作った作品は、販売してよいものばかりです。この連載を通して、もう一歩、ハンドメイド作家デビューを目指す方のお役に立てたらと思います。
第6回目は、
gauche(ゴーシュ)というブランドで創作活動をしている鈴木千晶さん。
色とりどりのカラーとドットやストライプなど、シンプルな柄を組み合わせた布小物を中心に販売を行っています。
gauche(ゴーシュ)には、フランス語で不器用な、歪んだ、未熟ななどの意味がありますが、こちらのネーミングの由来も気になるところ…。
鈴木さんに、ハンドメイドのある暮らしを伺いました。
『gauche』というブランド名、なんだか深い意味がありそうだなと感じたのですが、由来を教えてください。
鈴木さん:私自身の性格に当てはまっている事と(笑)、手作りの良さは少し歪んでいたり、完璧でないところに味わいや魅力があると思って、このブランド名にしました。そして偶然にも私は左利き…。
さらに宮沢賢治さんが大好きで『セロ引きのゴーシュ』のゴーシュの由来もそこからきている、ということで決定しました。
鈴木さんの作品は、たくさんの色や形を組み合わせていて、一見、バランスをとるのが難しそうだけど、全体の統制が絶妙にとれているところに惹かれるんですよね。
それは、きっとこのコンセプトから来ているんですね。
現在、パッチワークの布小物や、マスコットなど、ユニークな作風の展開をされていますが、ハンドメイドをはじめたきっかけ、そして販売に至った経緯は?
鈴木さん:長女が2歳の時に本屋さんの手芸コーナーで伊藤まさこさんの「こはるのふく」を見てから、娘に子供服を作りたいと思ったのがきっかけです。
ミシンも家庭科でやった程度で全く興味がなかったのですが、思い立ったらすぐやりたい性格のため、その日に手芸屋さんでハギレを買って、いきなり取りかかりました。ひどい仕上がりでした!(笑)
思い立ったら即行動!のタイプなのですね。
鈴木さん:(作品の)販売は手芸を始めてから2年たったくらいに、オークションに通園バッグを出品したのがはじめでした。
まだハンドメイド(の販売)が今ほど流行っていなくって、転勤族のため、当時は北海道の田舎の方に住んでいたので、それしか販売する方法がなかったんです。
「インスターズ」などのイベントにも出展されていますが、きっかけは?
鈴木さん:7年前沖縄に住んでいるときに、子供服のお店を経営してる方がブログで作品を見て声をかけてくださったのがイベント出展のきっかけです。 その後は沖縄のあちこちで室内、野外のイベントに出展していました。
東京に引っ越してきてからは、ネットショップ(minne)をメインで活動していましたが、インスタグラムを始めてから、いろんな方とのご縁のおかげで年に3~4回、最近ですとインスターズや歯固めのお店、nicoさん主催の『mama made』、ガーランドのお店kokoniさんのイベントなどに出展させていただきました。
転勤族で、各地をまわりながらも作品が評価され、販路やイベント出展の機会が増えていった鈴木さん。魅力的な作品のアイディアは、どのように生まれるのでしょう?
鈴木さん:意図せずひらめいたり思いつくことが多いですが、子供向けの雑貨は私が長女を生んだときに比べて、とても便利でかわいい育児アイテムがたくさん掲載されているので、たまにお買い物をしながら「今はどんなものが流行っているのかな」とリサーチしながら考えたりもします。
巾着のパッチワークが、特徴的ですが、柄・色使い、組み合わせや、形のアイディアについて、教えてください。
鈴木さん:製作の過程で一番時間を費やすのが色の組み合わせです。
自分の中で気に入った色をベースに、床に沢山の色の布を並べて、あれでもない、これでもないと、その時自分がしっくりくる色合わせになるまで並べ替えならがら時間をかけて選んでいます。
選ぶ色合いは日々の生活の中で目にしている風景や色合いだったりが根底にあるのかなと思います。
たとえば補修を繰り返してツギハギになった道路だったり、文房具屋さんでカラフルなマーカーが並んでいるのを見てわくわくしたり、心地よく感じた色合いなどが強く心に残っているのかもしれません。
ツギハギになった道路からもインスピレーションを受けたりするんですね!その感性はすごいですね。たくさんのものを見て、考え抜かれて生まれたカラー、きっと、鈴木さんが生活の中で心地よく感じた色合いのわくわくが作品を通して、お客様にも伝わるのかもしれないですね。
鈴木さん:私が作っているものは四角い形が多くてシンプルですが、巾着などは絞ったあとの形も見せたい部分がちゃんと強調されるように配置のバランスも考えます。
2色だったりモノトーンだったりシンプルなものは形も工夫したり地味にならないように紐や装飾に差し色になるカラーを入れたりします。
ひとつの作品で、たくさんのカラーや柄の布を使われていますが、材料はどのように収納されていますか?
鈴木さん:アイテムごとに無印のケースに収納しています。
小さなモチーフなどのパーツはさらに仕切りのあるケースを入れて収納しています。
とにかく沢山のカラー布とそれに伴いミシン糸、副資材も大量に増えてしまい、そろそろしまいきれなくなっているのが悩みです…。
布だけじゃなく、糸の数もすごい!一目で何がどこに入っているかがわかる収納は作業効率を上げてくれますね。
販売作品の中で、ひときわ目をひくのが『おだんごちゃん』のキャラクターですが、イラストなどのご経験があるのでしょうか?
鈴木さん:幼いころから朝起きたらすぐに紙とペンを手にしているくらい絵が好きでした。当時は裏側に何も印刷されていないチラシを探すのが日課でした。(笑)
小学校~中学校までは漫画家になりたくて、その後、イラストレーターの通信講座を受けたりしていました。
趣味の範囲で楽しんでいましたが、成人になるまで常に絵を描いていました。
作品を作るときに影響を受けるものはありますか?
鈴木さん:ファッション雑誌や海外のインテリア・グラフィックデザインの専門書などに刺激を受けます。配色などとても参考になります。
思い立ったら即行動!そして、さまざまな生活の色にインスピレーションを受ける鈴木さんが今シーズン最も作りたいアイテムは?
鈴木さん:まだ思案中ではありますが、ママやベビー&キッズ向けアイテムのラインナップを増やしているので、ウェットティッシュポーチやお砂場着など作りたいと思っています。デザインだけでなく、機能性もあって、なおかつママが子育てのモチベーションがあがるようなものを作りたいです!
鈴木さん発のお砂場着、遊び心があふれる商品になりそうですね!
nunocoto fabricには、現在約500種類の柄の布がありますが、最も好きな柄と、仕立てたいものを教えてください。
鈴木さん:布小物を中心に販売していますが、お洋服も作るので、『wind(ライトグレー)』で大きめでゆるりと着れるシャツを作りたいです!ポイントに鮮やかな糸でボタンをつけたいな、と思います!
作品のカラフルさとは反対に、お洋服を想定した生地のセレクトはシンプルなライトグレー。どんなシャツに仕上がるのか楽しみです。
現在、ご主人と高校3年生、中学3年生、小学2年生の3人の娘さんと暮らしている鈴木さん。 どんな1日を過ごしているのでしょう?
日中はしっかり制作時間がとれるんですね。
イベント前の忙しいときは、どのように乗り切っていますか?
鈴木さん:イベント前は途中で作業が止められず、どうしても家事がおろそかになってしまうのですが、そういう時だけ!と割り切って夕飯はスーパーのお惣菜や外食で済ませたりもします。
その代わりイベント後はしばらく予定を入れずに家族の団欒の時間を持ったり、家事に力を入れるようにしています。もうちょっと時間を上手に使えるようになりたいのですがなかなか解決策が浮かびません。(汗)
上の子2人はある程度大きくなったので自分でご飯を作って食べてくれたり、下の子の面倒を見てくれたりします。主人もとても協力的なので助かっています。
娘さんと一緒に創作活動されたりもするのでしょうか?
鈴木さん:長女と次女は小さいころ造形教室に通っていたので、お裁縫にも興味を持つかなーと期待していましたが、3人とも好きなことがバラバラで、残念ながら一緒にものづくりをするという夢は今のところ叶っていません。(笑)
次女は私の作品にとても興味をもってくれていますが、やはり裁縫に苦手意識があるようです。
でも昔の私と同じで、絵を描くことが好きなので一緒に絵を描くことはあります!いつの日か一緒にものづくりできたらいいな、と思います。
絵を描くのが大好きな娘さん、本当に、子供のころの鈴木さんそっくりですね。
そういった体験が、日常の色を観察する感性やユニークな作品作りにつながっていくのかもしれません。
いつしか娘さんが大きくなって、一緒に創作活動をする夢が叶うと良いですね。
鈴木さんの作品、ぜひSNSでも覗いてみてください。
【Creator's File】
鈴木千晶さん(東京都)
Instagram
@gauche_c